去る、11/21(火)、22(水)の二日間、神奈川県を舞台に町の工務店ネット・田園居住推進協議会の共催にて、「2023秋の設計セミナー」が開催されました。
セミナー1日目の建物見学では、3つのルートを設定。主な見学建物が住宅規模ということもあり、一度に見学者が集中しないよう、それぞれのルートで中型バス2台に分散することで、少しでもゆとりをもって見学できるよう配慮しました。
Aコースでは、吉村順三設計の「茅ケ崎の家」、堀部安嗣設計の「葉山・父母の家」を、Bコースでは、堀部安嗣設計の「鎌倉・雪の下の家」、ビオフォルム環境デザイン室代表の山田貴宏設計の借家「ちっちゃい辻堂」を、Cコースでは、ランドスケープを田瀬理夫が担当した「ゆりが丘ヴィレッジ」、永田昌民設計の「美しが丘の家」、趙海光設計の「王禅寺東の家」をそれぞれ巡りました。
どのコースも見学者の満足度が高く、全部のコースを見てみたかったという声がとても多く聞かれました。二度とセッティングできないであろう貴重な見学機会となる建物もあり、見学者は隅々まで見逃すことのないよう目を凝らしつつも、ゆっくりと流れる時間を存分に味わわれている姿が印象的でした。
見学会終了後は、翌日のセミナー会場のある横浜関内に場所を移し、懇親会が開かれました。見学した建物の印象を語り合うなど、各々が持つ情報を共有しつつ、心ゆくまで歓談を楽しまれる様子が伝わってきました。
セミナー2日目は、朝9時半から夕方5時半まで、みっちりと講演や対談が組まれました。
まず最初に壇上に上がったのは、鹿児島・シンケンの迫英徳氏と建築家・趙海光氏でした。ファシリテーターを町の工務店ネット代表の小池一三が務め、シンケンが取り組む「スタディハウス」について解読すべく対談が行われました。かつてOM時代にフォルクスハウスに取り組み、そこから築き上げたシステム思考をさらに磨き上げ、シンケンのスタッフ全員で到達した現在の姿がスタディハウスとして結実されていることを感じさせました。
次に、5社の工務店が各々の地域で実践されている田園居住の取り組み事例について報告を行い、続いて「まちのえ」「さとのえ」と題して、山田貴宏氏が手掛けた坂元植林とちっちゃい辻堂の事例が紹介されました。
休憩後、今度は、建築家の泉幸甫氏と都市計画の専門家であるベルリン工科大学客員教授の服部圭郎氏がベルリンからリモートで参加され、これからの街のつくり方やそのためのパタン・ランゲージ(体系)について、西村佳哲氏にファシリテーターを務めていただきながら紐解いていただきました。そして最後に、「建築と利他」をテーマに、政治学者の中島岳志氏と建築家・堀部安嗣氏による対談で締め括られました。
今回のセミナーの内容は、いずれも工務店や設計事務所にとって直接的な課題に対する回答ではなかったものの、今後仕事をおこなっていくうえで大変示唆に富んだ有意義な内容だったということで、参加者からは1日目の見学も2日目のセミナーも、いずれも中身が濃く、多くの方から感謝の声が絶えませんでした。
過ぎてしまえばあっという間の二日間でしたが、本来は何日もかけて体験、聴講するような、満足度の高いセミナーとなったようです。
<参加者の皆さまより>
「とても有意義で面白い見学でした。百合ヶ丘が目的で考えてましたが、美しが丘も王禅寺も素晴らしい建物の考え方で勉強になりました。(セミナーは)歩車分離・シンケンスタディなどなど興味深いテーマで一日があっという間におわりました。持ち帰り“今当社がやりたいことは何なのか”良く考えさせてもらえる内容に、行って良かったなと素直におもいます」
北海道:(株)オジタ/尾路一臣さま
「関心のある話題ばかりで、楽しかったです。とくに弊社でも、まちかどを作りたいと話はしていますが、つくり方に関して考え方ももっとやわらかく、その土地の持つ素地を活かしたプランにしなければいけないと考えるようになりました。迫さんと趙先生の対談、もっと聞きたかったです」
新潟県:H.Iさま
「セミナーは他社でも様々な企画がされているし、オンライン開催も当たり前になっているが、今回建物見学をさせてもらって改めて、実際に見て学ぶことの大切さを強く感じた。建物見学会は是非今後も開催してほしい」
神奈川県:K.Tさま
「非常にバラエティに富んだ講演で様々な角度から物事を見られる企画になっていたと思います。耐震や省エネ、どんどんグレードが上がっており、ついつい数値に目が奪われがち(設計の時間もその部分に時間を使ってしまう)ですが、あらためて田園居住の豊かさ、暮らしの美しさ等にいつも軸足を置いておきたいと思いました」
滋賀県:(株)坂田工務店/市川由美子さま
「今回は、横行する低質な建売り以外の方法にヒントを得られるのではと期待しました。期待通り、いい取り組みをたくさん知ることができました」
沖縄県:カメアトリエ/亀崎義仁さま