2024’春の田園居住・勉強会 レポート

3/26,27「春の田園居住・勉強会」が開催されました!

3月26日(火)、27日(水)の2日間、静岡県袋井市、浜松市にて春の田園居住セミナーー「まちづくりの独創的なシーズ(田瀬理夫が生んだ「種」)を学ぶ勉強会」が開催されました。

landscape 田瀬理夫 / illustrate 藤井信明 (袋井・宇刈「里山のある町角」静岡新聞広告案より抜粋)

昨年秋に横浜で開催された秋の設計セミナーに引き続いて、(一社)田園居住推進協議会と(一社)町の工務店ネットの共催という形で開催され、今回は、一棟一棟の家づくりに取り組むこれまでの工務店のあり方とは違う、新たに、町づくりという視点を持つことの重要性や必要性について問題提起し、町づくり工務店になるための考え方や事例について学びを深めました。

JR掛川駅に集合し、そこからバスで現在進行中の「袋井・宇刈の里山の町角」の現場を視察しました。あいにくの雨の中でしたが、バスの中で配布された図面や完成イメージ図を手に、参加者はこの状態からどのように風景が変化していくのかについて思いを巡らせていました。農水省の担当官や袋井市の担当者にも視察していただき、完成を楽しみにされていることが、言葉の端々から伝わりました。


袋井・宇刈の視察を終えると、バスは浜松市にある県立森林公園「森の家」に向かいました。
今回はここがセミナー会場となりました。冒頭、町の工務店ネット代表の小池からは「田園居住の百年」と題して、イギリスのレッチワースの取り組みが紹介され、豊かな町の景観がどのように維持されていったのかについて語りました。そして、それを真似た田園調布の景観がなぜ脆くも崩れていったのかを紐解き、土地の「所有」から「利用」へ転換することの意味を説きました。

続いて田園居住推進協議会の松村からは「田園居住推進が目指すもの」と題して、この組織がどのような役割を果たしていきたいかについて述べられました。

豊かな農山村の風景や豊かな郊外居住の景観を実現すること、そのためにはランドスケープデザイナーや建築家、工務店、不動産屋さんだけでなく、土地家屋調査士や定期借地という考え方の導入など、業態の垣根を超えたチーム編成の必要性を説き、地域工務店の役割が重要なこと、そして、それこそが一隅を照らす地域工務店の存在意義であると訴えました。

それを受けて、今回お招きした農水省の担当官お二人からは、農家住宅や農山村活性化に関する政策についての解説や現状の課題、今後必要とされる政策についてなどのお話を伺いました。

お話しの後には意見交換の時間も設けられました。参加メンバーからは地域の実情や課題が赤裸々に語られ、農家や農村が待ったなしの切実な状況であることが訴えられ、熱い議論が行われました。

休憩時間を挟み、後半は具体的な取り組みの報告が行われました。


まずはランドスケープデザインとは何かについて、袋井・宇刈の計画などを例に、ランドスケープデザイナーの竹林知樹さん(TakebayashiLandscapeArchitects)から講義が行われました。


続いて、袋井・宇刈の隣り合うA区画とB区画の2区画の建築設計を担当されている建築家の坂田さん(アトリエ樫)より、宇刈のプランの解説やご自身の設計スタイル、作品事例が紹介されました。


また、実際に定期借地の考え方を導入した6区画の町づくりに取り組んでいる岐阜県のいがみ建築工房・伊神さんから事業の内容が紹介されました。

子育ての場としての住宅のあり方から脱却することの重要性や町づくりに工務店が関わることの必要性が熱く語られ、参加者に“一緒に町づくりを進めましょう”と訴えられたのがとても印象的でした。

 

最後は定期借地借家協会で専務理事を務められている速水さんと、同協会で事務局を務められ、自らもマンションの管理業務に携わってこられた関口さんから、定期借地とは何か、どのような場合に有効に活用できるかなどについて事例を交えてご報告いただきました。

時間の関係で今回は深い理解までは至りませんでしたが、良好な景観を長期に渡って維持していくための選択肢として、定期借地という考え方の可能性を大いに感じることができたと思います。

別途、このテーマに関する勉強会を開催していきたいと感じました。

セミナー終了後には、懇親会が開催され、懇親会終了後には、土地絡みの案件をお持ちの参加者との相談会の場も設けられました。今回は3社から相談が持ち込まれ、中には今後具体的な事例としてご紹介できそうな案件もあり、今後、機会をみてご報告できればと思います。


セミナー2日目は、浜松市内の材木屋さんと工務店を視察しました。

主に天竜材を扱う永田木材さんは、食育になぞらえて「木育」に熱心に取り組まれており、近隣の小中学生等を対象に、森林や材木のこと、木の家や大工の仕事について、その意味や社会的役割を体感的に伝えるべく、作業場の一画に体験スペースを用意しています。構造材としてだけでなく、仕上げ材としてもできるだけ木を有効活用し、「使い切る」という姿勢をアピールされている点が印象的でした。

また、大瀧建築さんではご自宅兼モデルハウスと草屋根の事務所棟を見学させていただきました。天竜材や自然素材の活用だけでなく、家具や建具、照明器具にもこだわりが感じられ、草屋根とも相まって、大瀧建築の家づくりの考え方がよく表れたモデルハウスと事務所になっていることが伺えました。延床面積32坪の比較的小さな住宅ですが、大きな開口部や吹き抜けの効果などで、決して狭さを感じさせない設計がされており、世帯人数が少なくなっていく今後は、大きな家ではなく、誰が住んでも快適に暮らすことができる、このような家が求められているのだとあらためて感じることができました。

今回は、町の工務店ネットのメンバーだけでなく、秋の田園居住セミナーからの続きの参加者や定借協会関係からの参加者も加わっており、セミナーのテーマに限らず、個々のお互いの強みやこれまで知ることのなかった価値観について情報交換できたなど、正味一日という短い時間にも関わらず、大変中身の濃い一日を過ごしていただけたことと思います。

町づくりというテーマは引き続き、町の工務店ネットの重要テーマとして位置付けていきます。

引き続き、町の工務店ネットおよび田園居住推進協議会の活動にご注目ください。
よろしくお願いします。

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