2024・10月 町の工務店ネット 設計セミナー in 富山 当日のレポート

10/10,11
「町の工務店ネット富山セミナー」が開催されました!

去る、10月10日(木)、11日(金)の2日間、富山県にて、「町の工務店ネット・設計セミナーin富山」が開催されました。

「群居の取り組み」をテーマに、1日目は今回のホスト工務店である、建築工房アシストプラスアルファ、木の香・前川建築の2社の仕事について見学させていただき、2日目は同2社からの報告に加え、2社の建物をご見学いただいた東京藝大名誉教授の益子義弘先生と小池による対談、新協建設工業・石川支店の武田さんからの能登半島地震の報告、登壇者によるパネルディスカッションなどが行われました。

1日目の見学では、富山駅に集合し、まずは東芦原にある前川建築の隣り合う2棟のモデルハウス「HAIKEI1/2」を見学。若い世代を意識した小さくても広々とした空間が魅力のモデルハウスで、大きな開口部から見える田園風景とともに、隣り合う2棟だから実現できる共有の庭や外構の提案も魅力的なものでした。


続いては建築工房アシストプラスアルファさんのお仕事である花屋さんを含む3つの建物による小さな町角を見学しました。
花屋さん以外は外観だけの見学でしたが、暮らしぶりを含め、統一感のある景観からは、同社が大切にしている地域と調和した建物のあり方が伝わるものでした。


続いて、古民家を改修した前川建築さんの事務所、2社の建物が並ぶ「滑川の家」を見学させていただきました。
前川建築さんの古民家を改修した事務所「埜の家」は、伝統的な構造を生かしつつもインテリアには現代流のアレンジが加えられていて、一棟貸しの宿として、あるいはウェディングにも利用されているそうです。


滑川の家のうちの一方の建物は、現在もモデルハウス兼民泊用として使用されている前川建築の建物で、一段下がった庭には新設のサウナ棟がつくられていました。サウナ棟は宿泊された方が利用できるもので、専用の宿泊サイトを通して、インバウンドで訪れた外国人観光客から大人気とのことでした。立山連峰を望む最高のロケーションと相まって、オール木材によるサウナ棟は見るからに気持ちがよさそうで、その人気も頷けるものでした。


この日最後の見学先はアシストプラスアルファさんが建てられた隣り合う2棟の「杉の家」でした。

数年前の総会でも見学させていただいた建物で、現在は社長の沢本さんの住まいとなっています。
大きな開口部からは富山の街越しに立山連峰が望め、何を見て暮らすのかを意識した設計を重視する同社の家づくりの考え方が具現化されているとともに、生長した庭の木々との一体感も素晴らしいものでした。


短時間にも関わらず中身のギュッと詰まった見学を終え、バスは今回のセミナーの会場である呉羽ハイツへと向かいました。呉羽ハイツ到着後は、参加者それぞれ鍵を受け取り、一旦お部屋に荷物を置きに行き、18:30からは懇親会が開催されました。畳敷きの大広間での銘々に割り当てられたお膳による宴会となり、参加者同士旧交を温めました。


2日目は13:00近くまでみっちりとセミナーが続きました。はじめに前日2社の仕事を見学された東京藝大名誉教授の益子義弘先生と町の工務店ネット代表の小池一三との対談が行われました。益子先生からは、2社の工務店の仕事のレベルの高さに驚かれたこと、そして、そのきっかけとなった東京藝大出身の建築家・河合俊和さんや建築家の趙海彦さんなど、建築家による指導についても触れられました。対談では、2社が建築家との関りから自分たちのスタイルを構築され見事に昇華されたこと、さらに群居の中にそれを表現されたことについて語られました。

続いては、その2社から設計や家づくりの考え方について報告が行われ、建築工房アシストプラスアルファからは沢本社長自ら、木の香・前川建築からは代表の前川さんに続き、モデルハウスHAIKEIの設計を担当した二人の女性、堀里圭さんと川瀬由絵さんのお二人からも報告が行われました。

休憩を挟んで後半は、新協建設工業・石川支店の武田さんから能登半島地震の報告として「地震からいのちと家を守るために」と題して報告が行われ、地震のメカニズムとともに、液状化の影響や復旧の難しさについてなど、家づくりに携わる者としての切実さをあらためて感じることができました。

続いては、BS-TBSの報道番組「報道1930」の「新設禁止/タワマン規制なぜ?」の動画を皆で視聴し、この日登壇された工務店さんと小池によるパネルディスカッションが行われました。

番組では、神戸市長のタワマン規制に対する思いやコンパクトシティを目指した富山市の取り組みなどを例に、各コメンテーターが解説を述べられたもので、それを受けて、これからの郊外型のまちづくりのあり方や工務店の仕事について議論が行われました。
地域性を重視した景観を守ることこそ、一隅を照らす存在である工務店の生き方であるなど、地域工務店の家づくりのあり方とともに、それを群居として示していくことの価値について確認するものでした。

外部リンク:https://www.youtube.com/watch?v=su9AO2W4DeE

セミナー終了後には、秋田県から参加されたむつみワールドの佐々木社長から締めの挨拶が述べられ、来年の総会は秋田と山形で開催される予定があることが発表されました。
そして、今回のセミナーを総括され、最後に次のようなコメントが述べられました。

「不動産業界にいると世知辛い議論しか出てこないが、町工のセミナーに参加するととてもホッとする。前向きになれるんです」。

アンケートからも、「敷地の中だけで設計するのではなく、いかに風景を取り入れられるかが大切なことを学んだ」「隣り合う家との一体感が景観を生み出すことがわかった」など、参加者の多くも家づくりの本質としての景観づくり、まちづくりに対する意識が高まったことが伺えました。

断熱義務化や4号特例廃止など、来年に向けて、工務店業界にとっては厳しい受注環境が待ち構えていますが、こういう時期だからこそ見失ってはいけない、地域工務店としての強みや生き方を確認すべきではないでしょうか。

今回訪れた2社の仕事には、それが詰まっていたものと感じましたし、来月開催される岐阜のセミナー(伊神工務店の仕事)でも、引き続き、その具体例が示されるものと思います。ぜひご期待ください。

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参加社の皆様からいただいたアンケートより

後日、参加いただいた皆様からアンケートを取り、お陰様で多くの反響をいただきました。
ほんの一部ではありますが、以下に紹介させていただきます。

前川建築さんのモデルハウスからは繊細な心づかいを感じることができました。

外観の色や屋根形状等が違うのに統一感を感じました。お花屋さんと住宅というよりも、まとめて一つの風景というイメージでした。また、その佇まいからは何か温かいものを感じました。

窓から見える景色の切り方、板塀の高さ、洗練された造作など、随所に考えた跡を感じることができ、さすがだと思いました。

益子先生の、日本の集落の風景は500m離れるときれいだが、50mまで近づくと絶望的な気分になるというお話が印象的でした。

一軒だけでなく、数軒、街並みや周辺まで設計することの大切さを学びました。

沢本社長から「敷地の一番おいしい場所をリビングに」というお話を聞き、あらためて現場調査の重要性を感じました。

初めて参加させていただき、たくさんのことを学ぶことができ、非常に中身の濃い2日間を過ごさせていただきました。会社に戻ってからの業務が楽しみに感じています。

報道番組の動画を観て、はじめてコンパクトシティの意味が理解できました。

多くの事例や会社様の感想や意見を聞くことができ、日々の仕事に生かせることがたくさん見つかりました。素敵な機会をありがとうございました。

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