2016年の神戸、2019年のつくばに続いて開催を予定する「里山住宅博in袋井宇刈」(静岡県)の出展社募集・現場見学&説明会が、10月11日(水)に開催されました。
今回の袋井宇刈の現場の地形とその中に計画された住宅群全体が一目で捉えられる、縦1250㎜・横1030㎜・高さ250㎜(最も高い部分)の大きな模型、さらに、これまでの住宅博で制作された様々な広報物が展示された会場に42名の方々が集結。このプロジェクト「ククルくんの丘」共同事業体の1社である(株)造居 代表取締役 小澤典良さんのご挨拶から、説明会はスタートしました。
全体概要の説明後、早速現地見学に出発。まだ枯草で一面が覆われた状況の土地ですが、その造成は自然な形状を出来る限りそのまま活かした計画で、ほどよい高低差を有し、ここでの暮らしに溶け込むであろう風景の豊かさが想像されます。事前に配布された「ククルくんの丘」の完成イメージイラストと土地利用計画図が掲載された印刷物を片手に参加者の皆さんが思い思いに敷地内を歩かれる中、こんな声が聞かれました。「これからは窓から何を見ながら生きて行けるかを問われるようになると思います。一定に交通アクセスの良さや利便性もあり、とはいえ単なる郊外ではなく、山や緑を身近に感じられるこの土地は、そういうこれからの価値を大いに含んでいると感じます」
現地見学から戻り、次は、この土地計画を担うランドスケープデザイナーの田瀬理夫さん、そして、里山住宅博プロデューサーの小池一三より報告をさせていただきました。
今、子どもが思いきり遊べるところが、どこにあるだろうか、と問いかける田瀬さん。危険に晒されることなく、子どもが伸び伸びと過ごせる場「子どもの領分」がちゃんとあるということは、親にとってどんなに安心でしょう、どんなに楽でしょう。そのような住環境を生むために、一戸建ての住宅計画ではできないことが、この「ククルくんの丘」で実現できる、そのための基本となる考え方が「歩車分離」によって実現する「コモン」の存在です。このことを小池は『「小さな不便」より「大きな幸せ」』という言葉で、参加者に伝えました。「この土地を見て、正直面倒な土地だと感じるようだと先はないと思う。この土地だからできることを考えられなければ何も変わらないし、相変わらず20年で価値がなくなる家しか建てられないだろう。子どもたちの成長とともに歩むこの「ククルくんの丘」、とても興味深いです」── 田瀬さん・小池の話に、参加者からこんな言葉が寄せられました。
駐車場から家へ向かう毎日のひとときは、この土地だからこそ感じられる自然の機微や新たな発見、季節の移ろいなど、心のくつろぎ・リフレッシュへとも繋がります。マンションの駐車場から、狭いエレベーターに乗って部屋へ向かう道のりとは、かかる時間は同じでも、その在り方は大きく異なるだろうと。「小さな不便」も、その積み重ねが「大きな幸せ」を導いてくれるひとつとなり得ましょう。
その後、広報物の説明やこれからのスケジュール等を発表し、説明会は終了しました。あらためて模型や広報物をご覧になられていた参加者も多く、「駅前は利便性は高くても、とても豊かな環境とはいえない。東京から移住したい人などにはむしろ、ちゃんとした豊かさが残るこのような環境に、魅力を感じるのではと思う」「価値が減っていく家づくりではなく、価値が維持される、さらに価値が上がっていく家づくりへシフトしなければならない。そのことをきちんと分かってもらえる人にどう出会えるかが大事だと思う。そして、こうした価値観が広がる以外に、日本の成長はありえないのではないか」など、この説明会に参加しての感想を聞くことができました。
高度経済成長を背景に生まれた「ニュータウン」の劣化が進み、「ベッドタウン」とは、ただ寝に帰る場所を意味する言葉だということをあらためて認識し直し、コロナ禍を経て変わり始める若い世代の「暮らし方」「生き方」「価値観」に対する考え方など、「家づくり」における新しい局面が目の前にきていることを今の世情に読み取る中で、これから、地元の地域工務店の手によって、この「ククルくんの丘」に、どんな<まち>が、どんな<すまい>が生まれるか、ぜひご注目ください。
*わが町でも、工務店同志が連携して、これから30年を経ても劣化しない、高値のつく(価値の変わらない)<まち>を、<すまい>をつくりたいという皆さま。ぜひご一緒に、全国各地でステキな小さな町角を生みましょう! ご関心がある方は、お気軽にご連絡ください。
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