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「町の工務店ネット・設計セミナーin岐阜」が開催されました!
11月5日(火)、6日(水)の2日間、岐阜県にて、「町の工務店ネット・設計セミナーin岐阜」が開催されました。富山でのセミナーに引き続き、「群居の取り組み」をテーマに、今回は伊神建築さんの取り組みについて学びました。
1日目の見学では、名鉄犬山駅に集合して大型バス1台に乗り込み、小さなまちなみ事例として「西三条のまちなみ」「桐野町のまちなみ」「朝日町のまちなみ」の3つのまちなみ事例を、そして、最新の家づくり事例として「成清町の家」と、伊神建築事務所内にある「サッシュ工場」の合計5つの見学場所を巡りました。
西三条のまちなみは比較的初期の頃の実践事例で、3軒の住宅の群居の姿でした。
3軒共有の駐車場を確保することで、各区画の駐車スペースは1台のみにすることができ、小さな敷地でも豊かな空間を確保することができていました。各区画はフェンスなどで区切られていないため境目がなく、それだけで一体感のある景観が生まれていたように感じました。
桐野町のまちなみは最新の4軒の計画で、黒い板による外壁と木肌のコントラストが印象的な外観で、それだけで新建材だらけのミニ分譲地とは全く異なる趣がありました。
外構の資材なども自社制作されているなど、自社でできることは何でも内製化されている伊神さんならではの強みが生かされているものでした。
定借物件である朝日町のまちなみは、完成前に個別でご覧になっている方もあるかもしれませんが、今回完成した姿を見学でき、建物の仕上がり具合と外構・植栽の生長した姿を確認することができました。
造り込み過ぎず、あとは住まい手の手によって完成させていただくという伊神さんの家づくりの考え方は、地域工務店の家づくりの一つのスタイルだと感じました。
大切なのはあくまでも景観であり、まちなみであることが、伊神さんの家づくりに表れていました。玄関のない成清町の家づくりからも伊神さんの、家ではなく、暮らし本位の家づくりの姿勢が伝わるものでした。
最後に伊神建築さんのサッシュ工場と社屋を見学し、自社で作れるものは自社で作るという工房のような家づくり工務店の姿を拝見できたように感じました。
半日で5つの見学場所を巡るという、ややハードな1日目の行程を終了し、バスはホテルへと向かいました。参加者はホテルに一旦チェックインし、そこから別会場である町の居酒屋に各自移動して懇親会が開催されました。
2日目は犬山市民交流センターにてセミナーが開催されました。午前中に各登壇者による報告、昼食を挟んだ午後は登壇者と新建新聞社の三浦さんをファシリテーターとしてお迎えしてのパネルディスカッションが行われました。
報告は伊神さんと連携して家づくりに携わっている建築家の趙海光さん、そして、伊神建築代表の伊神さん、そしてランドスケープデザイナーの竹林さん、田園居住推進協議会の松村さん、最後に町の工務店ネット代表の小池一三より行われました。
趙さんからはプランではなくスケルトンを意識してまちなみを考えることの重要性や、近作の事例などが報告され、個ではなく、群として家づくりに関わる面白さや醍醐味についても語られました。
引き続いて伊神さんからは、群居としての家づくりに取り組むことになった経緯や背景が語られ、現在位置と将来の工務店像についても触れられました。群として家づくりを考えることこそ地域工務店の仕事ではないかと問い掛けられ、参加工務店に対して一緒に取り組みましょうと熱く呼び掛けられたのが印象的でした。
竹林さんからは自己紹介とともに景観づくりにおいて抑えておきたいポイントや自ら携わった計画について解説がなされ、松村さんからは工務店が土地を扱うための資金計画の一例として、クラウドファンディングについて解説が行われました。最後は小池からアウターーコロナの住まいのあり方や郊外居住に求められていること、農や食とともにある暮らしの姿こそ、今後求められる住まいのあり方なのではと、新築需要がより一層厳しくなっていく今だからこそ、一隅を照らす工務店の家づくりのあり方の必要性について見解を述べました。
昼食を挟んだ午後は、登壇者に対してファシリテーターの三浦さんや参加者がさらに質問をしていく形で議論を深掘りしていく時間となりました。そしてやはり議論の中心は工務店が土地を扱うことについて、それに伴う資金のことや事業の継続性についてなどでした。
なかなか結論めいたことにはなりませんでしたが、伊神さんからは、ないないづくしの地域工務店がまちなみをつくるのは、結局はリスクを取るしかないと訴えられたのが印象的でした。リスクばかり考えていても何もできない、これまでの家づくりや工務店のあり方を進化させるためにも一歩踏み出す勇気や覚悟こそ必要なのだと感じることができたセミナーとなりました。