住まいの衣替えをしよう
夏の住まい
冬の住まい
建築的な仕掛け、吊りデッキ
巾90㎝ 大きな庇
吊りデッキに板を置くとそのまま大きな庇になります。帽子のひさしが顔を保護してくれるように、巾90㎝の庇が1Fを、すっぽり日射遮蔽してくれます。
冬は板を取り払い、日射を取り込みます。少し面倒ですが、昔の人が簾を取り換えたように、モードの転換を図ります。
緑のスクリーン
吊りデッキからは、どこからでも地面と結べます。蔦や糸瓜などの緑のスクリーンを設けると、その蒸散作用によって、外壁の温度は、ほぼ外気温と等しい状態に保つことができます。
タープテント
デッキにポールを立ててタープを張れば、天幕の下に、室内とは別のもう一つの夏のリビングが出来ます。ビールのテレビCMではありませんが、目一杯、夏の戸外生活を愉しみましょう。
秋にはタープを畳みます
地震と違って、台風は前もって情報をキャッチできます。台風の報を聞いたら、タープを取り外します。庭のデッキに夜空が広がります。お月見を愉しみましょう。
バルコニーにもなる
このプランでは、建築の仕掛けとしてのデッキを表していますが、手摺を設けて、バルコニーにすることも出来ます。
ブリッジに格子を取り付ける
これは少し凝ったやり方ですが、建築家の趙 海光(ちょう うみひこ)さんの設計に、吊りバルコニーに可動式の格子を取り付けた設計例があります。
2F上の日射遮蔽を格子で行うことができます。
商家の日除け幕
タープテントは、室内への日射を遮る役割を果たしますが、テントを下せば、昔の商家の日除け幕の装いに早変わり。
薄くて軽いアモルファス太陽電池を用いれば、発電も可能です。
雨水を利用して
打ち水を
南側に傾斜する片流れ屋根で雨水を溜め、「一坪里山」や木々への水遣り、庭の打ち水に使います。
昔からの簾と、
風鈴と
昔からの簾が簡単に取り付けられます。軒端に風鈴を吊るすこともできます。
この愉しみ方は、寺田寅彦の随想『涼味数題』にくわしい。
秋になったら
吊るし柿
秋が深くなったら、昔の農家の軒先にあった吊るし柿をやりませんか。冬には大根を干して沢庵を作ることも出来ます。
日溜まり
桐一葉
日当たりながら
落ちにけり
高浜虚子の句です。
初秋、桐の葉が一枚、日の光を受けながらひらひらと落ちていきました。陽だまりを感じながら過ごす時間は至悦です。
クリスマスの飾り
12月の声を聞くと、クリスマスのイルミネーションを愉しむ人が増えています。デッキから、赤や青や緑のイルミネションを垂らします。
日本の夏は、東南アジアの蒸し暑さ
日本は、冬も、夏も!
8月のパリの気温は18.6℃、東京はそれより9℃近く高く、大阪の気温は熱帯地域のジャカルタやシンガポールより高いことをご存知でしょうか。大阪の1月(5.8℃)と8月の温度差は22.6℃もあります。仙台は、冬はパリより気温が低く、夏はパリより気温が高いのです。
日本の家は、冬と夏の両方の対策を講じなければなりません。
『徒然草』
兼好法師は『徒然草』の中で「家の作りやうは、夏を旨とすべし。冬は、いかなる所にも住まる」(『徒然草』第五十五段)と言っていました。
冬はどうにかなる、けれど夏は耐え難いというのです。日本の住宅は、住まいの高断熱・高気密化によって、冬の居住性能は向上しましたが、夏は冷房に依存する度合いが増しています。
スイスでは、夏は冷房しません。日中の日射は結構きついけれど、彼らは日射遮蔽に工夫を凝らすことで、エアコンを回さなくて済むようにしています。
インドシナの老人と芭蕉
エアコンで冷房するようになったのは、昭和33(1958)年以降で、当初は冷房機能のみで、エアコンと呼ばず「クーラー」と呼ばれていました。長い歴史の中でみると、エアコンが家庭に入ったのは、ごく最近のことです。それまでは窓を大きく開き、通風で涼を得ていました。
高温多湿の空気を除去するのに、最も有効なのは風です。インドシナの老人がハンモックに身を横たえ、読書を愉しんでいるのは、そこが快適だからです。
芭蕉に「ひやひやと壁をふまえて昼寝かな」という句がありますが、共通するのは、涼風による快です。同じ暑さでも、中東やインドとは違っていて、彼の国は熱風が家を襲います。インドで窓を小さくし1mもの壁をつくるのは、熱風を入れないためです。そう見ると、インドシナの老人と芭蕉の快は、モンスーン地帯特有のものと言えます。問題なのは、日本の都市部においては、窓を開け放つ暮らしが成り立たなくなっていることです。
一台のエアコンで全館冷房
夏対策の基本は、外界から影響を低減する家の造り(特に屋根からの輻射熱と西日対策と、日射遮蔽を徹底することです。それでも、きつい場合にはエアコンを利用します。「電力制限令」の試算根拠では、一軒当り大型エアコン2.6台と試算されています。しかし、全部動いていることは少なく、またリビングであっても間欠利用(点けたり消したり)していますので、新聞報道では、利用実態は1.8台程度の稼働と見ています。さらに我々は、一台のエアコンでやれないか考えました。
左の断面図は、その仕組みです。家の大きさやプラン計画によって異なりますので、どの住宅にも当てはまるものではありませんが、広く開放的なプランであれば、この方法が活かせます。自由なインフィル(間仕切りなどの内装)であれば、暮らしの変化にも、容易に対応できます。
日本の冬は、北ヨーロッパの寒さ
壁の厚さの違い
ドイツなど、北ヨーロッパの住まいで特徴的なのは、壁の厚さです。レンガを積んだ組石造の家は、レンガをタテ方向に2枚(50㎝)も用います。
その1枚分を刳り抜いた壁面の窪みはニッチと呼ばれます。小さな彫刻などが置かれます。壁が50㎝もあるから可能なことで、日本の真壁造りの家では、壁を突き抜けてしまいます。
最近の大壁造りの家でも、柱の太さが120㎜角だとして、外側の下地木材は15〜20㎜、外壁材は12〜25㎜、内側に石膏ボードのクロス仕上げで1㎜、全部あわせても148〜166㎜に過ぎません。
ドイツの寸法もメートル法です。しかし家の面積の考え方が違います。日本の真壁の家は壁芯で測ります。壁の厚さの中心線が、部屋の寸法を測る基準です。
それに対してドイツの住まいは、壁の内側で測ります。日本の壁は薄いので、この測り方でよかったのです。また、畳みの枚数で部屋の大きさをつかめましたので不便さも感じませんでした。
木の家と石の家
世界の70%の人は、レンガ・石を積んだ“組積造”の家に住んでいます。これを一括りに「石の家」とすると、その建築はひたすら石やレンガを積むのが基本です。この建築の悩みは窓を設けることで、窓は「穿つもの」という気分が多分にあって、要するに穴を開けるものでした。
石の建築史は、窓との苦闘の歴史でした。その結果生まれたのがアーチの技法です。石の建築が、崩壊という言葉で表わされるのに対し、木の建築は、倒壊という言葉で表わされます。しかし、柱間は空いていますので、いくらでも大きな窓をつくることができました。
石の建築は、打撃を受けると崩れます
ので、地震の多発地域では不向きです。明治期のレンガ建築は関東大震災によってほとんど潰れたことが、それを表してます。また、大きな窓がつくれるのは、高温多湿の日本では有利でした。湿気を含んだ高温の空気を除去するのは、通風が一番ですので。
石の家は熱容量が大きい
ドイツの50㎝のレンガ壁は、熱容量が大きいのが特長です。熱容量の大きな家は、1度温めると冷えにくい性質を持っています。
北ヨーロッパでは、秋が深まると暖房を入れ、4月の終わりまで暖房の火を消しません。暖房方式は、低温水(60℃未満)循環式により、都市集中暖房によってシステム化されている場合が多く、暖炉や薪ストーヴなどの直火は、最近では生活を愉しむためのものとされ、局所暖房の範囲のものになっています。
体感温度の6割くらいを、彼らは輻射熱から得ているといわれます。この間接暖房のベースとなっているのが、熱容量のある壁です。
今回、びおハウスが用いる木繊維断熱材は、北ヨーロッパで発達した断熱材で、ここ五年ほどの間に急速に普及しました。石油系の断熱材と比較すると、約5倍の熱容量を持っています。彼らは、熱容量が大きな意味を持っているか知るが故に、この断熱材を選んだのでした。
日本の暖房は、熱容量が乏しいため、これまで直接暖房・間欠(点けたり消したり)暖房にならざるを得ませんでした。びおハウスは、家全体を保温する住まいをつくろうと知恵を絞りました。