プロジェクト構想 その9

20ヶ月後に向け、
一冊の書籍を発行することで、
プロジェクトの総仕上げとしたい。


このプロジェクトを開始する2年ほど前から、秋山東一さんの世界をいかに書籍にするかを、秋山東一さんと、編集者の真鍋弘さんと、私の3人で検討を重ねてきました。

発行を条件づけるため、フォルクスハウスの関係者17人に集まっていただき検討会を開いたり、何社かの版元との接渉を重ねていますが、なかなかまとまりませんでした。

それは秋山東一がやってきたこと、やっていることが広く、深く、それぞれおもしろすぎて隘路に(はま)ってしまい、またそれぞれ独自のものであり、特殊解のものであり、さて一体、どこに焦点を合わせたら一般解になるのか、つかめずにきました。

真鍋弘さんに、今回のプロジェクトについてお話ししたら「本になるかも」とぽつりと言われました。「アース・カタログ」について触れましたら、具体的なスペックの内側と外側と、同時にそれをエクセルギーで解いたらこれまでどこにもないものになるのでは、ともいわれました。

株式会社ワールドフォトプレス発行:「小屋の力」より抜粋

私は前から、秋山東一さんの本を作るとしたら『小屋の力』(ワールド・ムック本 発行・ワールドフォトプレス)のような作りになるかな、と思っていました。この本は、A4紙型・480ページ・3.2センチの分厚い本です。

上の真ん中の記事は、秋山さんの盟友玉井一臣さんが「小屋の力とその持つ意味」と題して執筆されたものです。右側の記事は、椅子研究家の織田憲嗣さんによる文とスケッチです。ごった煮のような本ですが、本レポートの1ページにご紹介したスチュアート・ブランドの 『Whole Earth Catalog』のページと何か似ていませんか。

ブリコラージュ(今あるもの、身近に入手できるものを用いてモノを生む)の方法に立つ人が本を作ると、こんなことになるのかも知れません。スチュアート・ブランドも秋山さんもブリコラージュの人なので似ているのです。

無論、本は編集者によって編集されるものなので、作業に取り掛かったら、ここに述べたことがそのまま実現されることはありません。私の役割は編集人なので、大きな方向について述べることにあります。

しかし、この本を実現するには、相当の腕力と緻密な作業と資金を必要としますので、広範囲な人の参加と、資金的にはクラウドファンディングのような方式に依らざるを得ないと見ています。それはいかに売れる本にできるかにかかっています。

書籍の取り組みは、プロジェクトの最大の課題であり、実現されれば大きな成果物となるでしょう。

工務店とユーザーが、この書籍を開きページを繰りながら、プランニング・ツールとして用いられるでしょう。かつて工務店は、立見鏡などを新築祝いとしてユーザーに差し上げました。それを思い出し、この本を、契約時にユーザーに記念品としてプレゼントしたらどうかと考えました。500ページ近いぶ厚い本を手渡し、「さあ、プランニングを開始しましょう」と声を掛けるのです。

我々が知恵を寄せ合い、それぞれのブリコラージュを持ち寄ってまとめる「アース・カタログ」と、この本に掲載される数々の建物情報は、工務店とユーザーの住まいづくりのツールになり、その1ページ1ページは、まるで「魔法の杖」のような役割を果たしてくれるでしょう。

フォルクスハウスでよかったのは、「ベースとゲヤ」「グリッドとモジュール」などの用語が、ユーザーと設計者・工務店の間で共通言語化されたことでした。再び、そんな世界を醸し出すためのツールになるのが「アース・カタログ」であり、この書籍だと考えています。

しかし、今はまだ山の麓にいて、ただただ山を仰ぎ見ているところで、その道程を考えると気が遠くなります。千里も道も一歩からと申します。

まず多くの賛同者を得ることなしに、このプロジェクトは進みません。

あなたの参加を呼びかけます。

文 小池一三