【報告】富山・「夏の設計セミナー」

 [2018年08月01日]

都市住宅の拡張郊外化ではなく、「佇まいとしての田園集落」という。新たな視座に立つ、近郊集落の創造と居住方法を学ぶ設計セミナーが、一泊二日の日程で開催されました。

一軒の家の単位を越え、町かど・集落として、これからの暮らし方、郊外住宅を考えるというコンセプトに賛同した、全国の工務店・設計事務所から、富山に集った人数は、なんと総勢128名
北は秋田、南は鹿児島。場所によっては前泊+後泊で、計4日をかけて駆け付けた工務店もあり、もともと高い気温にみなさんの熱意も加わり、熱い熱いイベントとなりました。その熱気が、少しでもお伝えできればと思います。

●建物見学ツアー

まずは、富山の工務店と建築家によるベスト・チョイス6棟の見学です。

立山平屋 [設計:河合俊和、施工:木の香 前川建築]
田園の中の集落に建つ、平屋。瓦屋根の軒の一文字がビシッと効いています。
インナーガレージを含む広い土間空間、縁側・外廊下という半外部空間が特徴的です。夜間は、居室の照明により、建築自体が田園の中に存在する行灯のような役割を果たすといいます。

五百石の家 [設計・施工:建築工房アシストプラスアルファ]
立山連峰の麓の家。大きくせり出したウッドデッキから、美しい山を見上げることができます。家の前にアルミのカーポートが並ぶ分譲地とは対極にある木の家の魅力を存分に味わえる、暮らしの楽しみを思い起こさせてくれる建物です。

埜の家 [設計:河合俊和、施工:木の香 前川建築]
約120年前に建てられた古民家を改修した建物は、北陸特有の民家構造「枠の内」を持つ平屋です。蔵も改装して、土日限定のみどりのショップとして使われています。敷地は屋敷林・カイニョに囲まれ、この時期の暑すぎる日差しを遮ってくれます。

-田園ヴィレッジ-
町の工務店ネット会員の富山の工務店3社により企画された、今回の企画を先取りする田園の暮らしを楽しむプロジェクト。今回は、その中の2棟を見学しました。

寺町の家 [設計・施工:建築工房アシストプラスアルファ]
住まい手さんは、「となりのトトロ」の舞台となったような場所で子育てをしたいという夢を描き、それを実現されました。自然の中で、コンパクトで景観に溶け込むような家。芝生、川、田園、その向こうに立山連峰。地域を活かした工務店の仕事。

景の家 [設計:河合俊和、施工:木の香 前川建築]
立山連峰と田園風景を舞台にした、劇場のような家。これからの里山の風景をここに刻み、魅力的な暮らしが始まる予感に彩られています。

杉の家 [設計:趙海光・沢本雅彦、施工:建築工房アシストプラスアルファ]
完成から5年を経て、飴色を増した杉の材、床についた無数の小さな傷、そういったものが木の家の魅力を引き立てています。竣工時が一番美しく、だんだんと劣化する家ではなく、風化して味を増していく家の魅力を味わっていただけたでしょうか。

写真:建築工房アシストプラスアルファ 武部 風馬

今回は、新築はもちろん、築5年になる木の家、古民家改修の建物、コンセプトを定まった田園ヴィレッジなど、多彩な建物見学で、得るものも非常に大きい建物見学となりました。暑い中でしたが、現地に到着すると、熱心なまなざしで見学をする参加者の皆さんが印象的でした。好きだから建築をやっている。そういう方ばかりが集まっているイベントです。

●ケース・スタディ課題地見学

建物見学の合間に、ケース・スタディの課題地を実際に見学しました。
うだるような暑さの中でしたが、実際に訪れることにより、しっかりとイメージがつかめました。

立山町課題地は、来年3月で廃校になる小学校。グラウンドと道路との間の並木は、そのまま利用できそうです。

上市町の課題地は、まさに田んぼの真ん中。この解放感。

写真:建築工房アシストプラスアルファ 武部 風馬

●6人の建築家による、「野の家(ベーシックな平屋)」プレゼン会

三澤文子さん、趙海光さん、河合俊和さん、村松篤さん、堀部安嗣さんの5名の建築家より、全国に展開できるベーシック・ハウス、「野の家」が提案されました。
これからの住宅にふさわしい、示唆に富んだ案が目白押しです。この資料を手に入れることができるだけでも、参加した価値があると言えるのではないでしょうか。

また、株式会社シンケンの迫英徳さんより、「野の家 x SINKEN STYLE」が発表されました。豊富なパターン展開も示していただきました。

●大交流会

全国から集まった建築好きの仲間たちの大交流会です。建築家、工務店、設計事務所、立場を問わず、交流を深めました。

株式会社シンケンの町の工務店ネット入会の発表も行われました。

●第2回まちづくりプランナー養成塾「田園居住ケース・スタディ」即日設計

2日目は、まちづくりプランナー養成塾塾長のランドスケープデザイナー・田瀬理夫さんの講演で幕を開けました。

そして、午前中をたっぷり使っての、即日設計。建物の設計ではなく、2反の土地に対するまちづくりの設計です。
熱心に取り組む参加者の元を、塾長・田瀬さん、師範・趙さん、助手・林英理子さんが回ります。

●これからの経営戦略を練る会

即日設計と同時開催されたのが、経営者コースとも言うべき、これからの経営戦略を練る会です。秋田県、東京都、神奈川県、山梨県、富山県、石川県、静岡県、滋賀県、和歌山県、兵庫県、島根県、山口県、香川県、佐賀県、大分県、熊本県、鹿児島県など、多くの地域で耳目を集める取り組みだということが分かり、意見を交換し合い、どのように取り組んでいくかを談議しました。

●「田園居住ケース・スタディ」プレゼン・講評会

昼食後、午前中の即日設計案からいくつかを抜粋し、プレゼンと講評を行いました。
16案が発表され、様々な角度からのアプローチがあり、発見の多いケース・スタディとなりました。
最後に、町の工務店ネット代表理事の小池一三より、今後の取り組みの呼びかけがあり、大きな拍手の中、閉会しました。

今回のケース・スタディの報告をまとめ、町にプランの提案を行う予定です。また、このケース・スタディの取り組みは、これから全国いたるところで開催します。ぜひ、うちの地域でやってくれという工務店・設計事務所は手を挙げてください。
同時に、新しい近郊集落の取り組みが、いくつかの地域で始まります。これらを進めていく一般社団法人 田園居住推進協議会も発足しました。

今後の取り組みにご注目ください。